年頭所感 WICIジャパン 代表理事 北川哲雄
2023年1月
WICIジャパン 代表理事
北川 哲雄
皆様明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
2024年という年はサステナビリティを巡りまた多くの進展がありそうです。3つの点に着目したいと思います。
第一に情報開示基準の実装化が相当進展するであろうと予想します。IFRS(International Financial Standard Foundation)とEFRAG(European Financial Reporting Advisory Group)
が推進する国際的な2大基準設定機関の動きがますます活発化するであろうということです。国内ではもちろんSSBJ(サステナビリティ基準委員会)の動きも注目されます。どのような形で進展するか注目されるところですがこの中でIFRSとEFRAG基準の相互運用性(Interoperability)がどう進むか注目したいと思います。
第二に企業側の開示スタンスを考えてみると、私は多くの欧州における開示先進企業はOR(シングルマテリアリティかダブルマテリアリティか)でなく、AND、すなわちシングルマテリアリティもダブルリアリティも備えた開示を進めてゆくと思います。最近のESRS(European Sustainability Reporting Standard)が高い生産性をもって基準設定を進めていることも影響していると想定しています。しかし、この傾向は日本企業にとっても無縁ではなく、一部企業の中にはさして緊急性もないのにわざわざ欧州市場で環境債(しかも日本よりかなり高いクーポンレートで)を発行している例も見られます。欧州有力ESG投資家へのアピールであるとともに社内のサステナリティ部門における貴重な「経験」の蓄積を目論んでいるのでは、と私は推定しています。
第三にこういったダブルマテリアリティの台頭にも拘わらず、私はSASBの重要性が再認識されると思います。企業の情報開示は第二で述べた傾向が進めば進むほどSASBを読み解く必要があると考えます。シングルかダブルかの前に自社にとって、所属するセクターによってという観点が必要だからです。
もちろん、サステナビリティ開示に関心のある人はISSBのS1を英語で熟読することが求められますが(ニュアンスは日本語に直した場合分からない点も多々あります)、そのうえで該当するセクターにおけるSASBの精読が必要となるのではと思います。通常SASBはシングルマテリアリティに基づいており米国の産業構造・法域に即したもので参考にならないという人が多いのですが、よく読めば大変参考になります。
今年もWICIジャパンの活動においても上記3点の動向に注目しながら議論を進めて行きたいと思います。