年頭所感 WICIジャパン 常務理事 住田孝之

2024年1月
WICIジャパン 常務理事
住田 孝之

明けましておめでとうございます。昨年も、世界中で、サステナビリティ関連情報の開示について様々な動きがありました。

欧州は心配していたとおり、細則主義にまい進していて、義務化されたESRSのルールに従えば、大企業だと600-700ページもの開示資料を作らなければならなくなってしまいました。これでは、投資家などの読み手にとってみると、何が大事かわからない、単なる辞書か統計集のようなものになってしまいます。

今は欧州企業や外国企業の欧州支社のみが対象なのでまだいいのですが、2028年からは外国企業の本社も対象となる予定で、大変心配です。

そうした動きが強まるほど、グローバルベースラインを作ろうというIFRS財団の動きが重要になります。ISSB(国際サステナビリティ標準理事会)が策定した一般要求事項と気候変動関連の情報についての標準は、これから実際に使われることになります。今年からのISSBの活動の中で、統合思考や統合報告の枠組みがIFRS財団においても中心的に位置づけられ、企業固有の価値創造ストーリーとの関係における「重要性」に焦点が当たるようにできるかどうか、大きな分かれ道です。そうなれば、価値創造において鍵となる企業固有のインタンジブルズとその活用という、WICIがずっと追いかけてきたことに改めて焦点が当たることになります。

世界の動きはいろいろですが、考えてみれば、企業としてやっていくことは変わりません。価値を創造していくこと、企業固有のやり方でやっていくこと、他社と差別化しながらやっていくこと、です。それを表現して、コミュニケートして、ステークホルダーへの理解を深めていく、ということが行うべきことです。開示に関して、標準やルールから始めるのではなく、まずは自由に自社らしいストーリーを抽出してみることです。そのうえで、ルールや標準が求めている型にあてはまるように少し(選択的に)追加したり、補足したり、微修正したりしていく、そんなアプローチをとっていれば、間違いありません。

そうした企業による実践があれば、その好事例が、逆に標準やルールに反映されていくことにもつながります。

人の作った概念に右往左往するのではなく、自らの考えを自信をもってまっすぐ主張していくことができるような転換点になる一年になればと思います。それに向けて、みなさまWICIの活動にも積極的にご参加ください。

なお、WICIは昨年秋にWorld Intellectual Capital/Assets InitiativeからWorld Intangibles Capital Initiativeに名称が変更になりました。略称のWICIは変更ありませんのでご承知おきください。