年頭所感
WICIグローバル会長・WICIジャパン 常務理事 住田孝之
2021年1月
明けましておめでとうございます。コロナという目に見えないもののパワーを思い知らされた昨年でした。それでというわけではありませんが、昨年は、お金という形のあるものではない、「非財務」をめぐる世界の関心が、過去にないくらい高まった年でもあり、それが今も続いていることはご案内のとおりです。
世界経済フォーラムによる非財務要素に関するMetrics作り、非財務情報開示の標準の策定を宣言し急ピッチで作業を進める欧州委員会、新たなSustainability Standard Boardの設置を問うたIFRS、IIRCとSASBにGRI、CDP、CDSBを加えた5団体による提言、主だったところだけでもそんな動きがあった昨年。そして、12月にはこれら主要プレーヤーが一堂に会した(webですが)欧州主催の会合にWICI会長として呼ばれ、8分間のインプットを行い、議論する機会があったことも、WICIにとって記念すべきこととなりました。
今年は、世界経済フォーラムによるMetricsの採択、SASBとIIRCの合併及びCDPの合流の可能性、3月末とみられる欧州委員会のディレクティブ改訂提案。WICIもこうした大きなうねりの中で存在感を発揮し、重要なインプットをしていきたいと考えます。
日本では当たり前のことも、世界では当たり前ではありません。価値創造のために重要な無形資産、非財務要素と言いながら、投資家含め関心を集めるのはESGが中心。単純な全企業比較がしやすいからということなのでしょうが、それではリスク管理やコンプライアンスのチェックをするのが関の山。ほんとの個性ある価値創造のやり方を表現するには、従業員のモチベーションや能力、技術力、品質、関係者との長期的信頼関係、リーダーシップ、データやノウハウの蓄積、などの無形資産、知的資産に光を当てることが不可欠だ、という時代に少しでも近づけるよう、努力していきたいと思います。
全社共通的な、リスク管理的なミニマムな「規定演技」の開示項目と、正の外部性のある無形資産を活用した前向きな価値創造に関する「自由演技」としての開示、ただし用語や選択されるKPIの計算方法についての標準化、といった基本的な仕掛けを世界で実現したい。
そのためには、会員のみなさまが自信をもってそうした前向きな部分について説得力を持って個性を表現し、具体的成果物としての質の高いレポートや内部管理の実例を世界に示していくことが鍵になります。昨年から順次開始している経営デザインシートを活用した統合報告の質の向上セミナーもそのドライバーになれればと思います。単純な比較がしたいというだけの外国の人が決めたルールに右往左往するのではなく、日本人が大事だと思うことを、胸を張って世界に示していきましょう。
昨年10月の一般社団法人化以降ますます活動が活発化するWICIジャパンと会員のみなさまの一層のご発展とご健勝を期待して、1年を始めさせていただきます。今年もよろしくお願いいたします。
WICI事務局より
- WICIジャパン 入会について〈激動の2021年をご一緒に〉
- WICIジャパン主催 統合報告セミナー2021〈事業会社向け〉