北川 哲雄

青山学院大学名誉教授・東京都立大学特任教授

この度代表理事に就任しました北川でございます。一言、ご挨拶と抱負を述べさせていただきます。今日ほど、企業および組織体が長期的価値を創造するにあたり自らの知的資産(人的資産、組織資産、関係資産)を認識しそれを投資家・内外の広汎なステークホルダーに的確に伝えることが重要な時代はありません。

WICIは2007年に発足し、翌2008年には前身のWICI JAPANが設立され「知的資産経営」の確立に向けて充実した活動を行ってきました。私自身は運用機関勤務等を経て2005年より大学の教員となり、そのなかで一部、前任者からファイナンシャル・リポーティング(Financial Reporting)という科目を引き継ぎましたが、2011年にコーポレート・リポーティング(Corporate Reporting)という科目名に変えました。授業において学生と一緒にある企業の長期業績予想(5~10年)を行う場合に過去の財務諸表分析を基礎としながらも知的資産を把握することの重要性を感じたからです。企業は自らの知的資産を冷静に把握するばかりでなく、それを如何に効率的に開示するかはトップマネジメントの重要な仕事になってきたからです。

WICI自身が協同作業したIIRCによる統合報告のフレームワークが2013年に公表されて、日本において今日統合報告書を作成している企業・組織体は500を超えると言われています。WICIの活動もこれに沿うように順調に発展してきていると言えます。

投資家・ステークホルダー側も長期投資・ESG投資への促しもあり知的資産への関心は高まりつつあり様々な意思決定に役立てようとする動きが活発化しています。しかし、この営みは絶え間なく変化します。WICIジャパンの役割は企業・組織体と投資家・ステークホルダー間の「知的資本情報」をめぐる対話を洗練化することにあると言えましょう。 私自身このような活動を促進するための一助になれるよう努めたいと思います。