年頭所感
企業の価値創造とサステナビリティーをつなぐ無形資産の重要性
2022年1月
WICI グローバル会長
WICIジャパン 常務理事
住田 孝之
明けましておめでとうございます。昨年は、企業が生み出す経済的価値、社会的価値、環境価値の源泉としての「非財務(non-financial)」要素や「無形資産(Intangibles)」への関心が世界中で高まり、2007年の設立以来のWICIの活動内容が世界に共感されつつあることを実感する年になりました。
EFRAGとISSB
大陸欧州では、昨年4月、従来のNFRD(非財務報告指令)を改訂したCSRD(企業のサステナビリティー報告指令)ができ、企業が生み出す社会・環境面でのインパクトに着目して、サステナビリティー情報の開示が義務化されました。その詳細がサステナビリティー情報開示基準ですが、EFRAGの作業チームが中心となって、今年の前半の発表を目指して作成しているところです。
一方、英米勢は、昨年6月にIIRCとSASBが合併してできたVRF(価値報告財団)が中心となり、IFRSの活動に深く関与。11月には、サステナビリティー関連財務情報開示標準を策定するISSB(国際サステナビリティー標準理事会)がIFRS財団の下に設立され、VRFが標準策定作業の中心的役割を果たしています。こちらも今年6月に一般要求事項を公表することを目指しています。
無形資産(インタンジブルズ)への関心
一昨年12月に続き、昨年3月にこれらの関係者が一堂に会した欧州主催の会合にWICI会長として出席する機会があり、企業の価値創造とサステナビリティーをつなぐ無形資産の重要性を力説しました。欧州の指令でも無形資産が必須記載事項として明記され、ISSBでも無形資産への関心が高まっている今の状況は、その主張が受け入れられつつあることを示しています。
組織的にも、ボードへの参加を含むVRFとの連携、欧州のEFRAGとの協力覚書の締結と、上記の両方の動きにしっかりと関与できる仕組みを作ることができました。これは、昨年のWICIの大きな成果であり、今年の活動の基盤として極めて重要なものです。
サステナビリティー関連情報に関する開示の仕組み作りへ
サステナビリティーやESG関連の事業や企業に莫大な資金が流れるようになった今日、サステナビリティー関連情報に関する開示の仕組み作りは、急ピッチで進み、今年は世界で競争的にその成果が示されます。その中でWICIのこれまでの蓄積を世界にインプットする大きなチャンスが目の前にあるというのが今の状況と感じています。
世界の仕組み作りというと、どうしても受け身になり、できたものにどう対応すればいいかを考えるというのが日本人にありがちなアプローチですが、それではもったいない。みなさんも、WICIというグローバルネットワークを活用して、どんな仕組みを作りたいのか、何をインプットして、何を最低限確保したいのか、を自ら設計して、発信し、仕組みの中に組み込んでまいりましょう。千載一遇のチャンスです。
私自身も今年6月までは会長任期が延長されました。みなさんのお力を得て活動してまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。