2026年 年頭所感
WICIジャパン 代表理事 北川哲雄
2026年1月
WICIジャパン 代表理事
北川 哲雄

皆様明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
企業の情報開示の動向に関して今年も思うところを記したいと思います。二点あります。
第一は昨2024年度にEU主要企業のアニュアルレポートにおいてESRS(欧州サステナビリティ基準)に基づく情報開示がスタートしたという事実です。私は企業の情報開示における100年ぶりの大改革だと思います。
1930年代に米国において1929年の大恐慌を一つの契機として本格的な財務情報開示制度がスタートして精緻化し今日にいたっています。
ESRSはEU域内の企業を対象としてスタートしましたがESRSと相互運用性(Interoperability)を模索しているISSBによるサステナビリティ情報開示がグローバルに展開し2030年頃には軌道に乗ることになるでしょう。即ち100年という期間を経て財務情報と非財務情報(サステナビリティ情報)の2頭立ての開示が一般化することになるのです。この状況を先取りすべく2024年のノボ・ノルディスク社(デンマークの医薬品企業)のアニュアルレポートの構成はAnnual Review, Sustainability Statement , Financial Statements and Additional Informationの3本立てになっています。Annual Reviewには我が国企業の統合報告書に近い情報開示が盛られていますが、残りの2つにおいて投資家にとって有用な「サステナビリティ情報報告」と「財務情報報告」とが淡々と記述されています。前世紀末から活動を始めたGRIやISSBのバックボーンとなっているSASBの努力は実りつつあると理解すべきでしょう。次は投資家側がそれらの情報をどのように読み捌くかです。
さらに開示されてたESRSの投資意思決定における有用性に関する研究成果がEUではすでに発表されていることも私には驚きです。ダブルマテリアリティを基に淡々と記述された資料から投資価値関連情報が導き出せるという思いもかけぬ(私から見れば)事実の発見です。
第二は米国におけるESG Back Ruch の動きをどのように考えるかです。色々米国の識者と議論したり、あるいは米国企業の情報開示状況を観察してみるとRisk Management とSustainability Activity for Corporate Value Creationという言葉が最近強調されているということに気づきました。気候変動に対するリスクに無頓着に対応していることは企業価値に短期的にでも最早大きな影響を与えることや、知的資本や人的資本の価値関連性、サイバー・リスクの顕在化による価値毀損現実化の動きなどがAnnual Reviewの中でページを割いて詳述されていることが多くなりました。コーポレートガバナンス情報もProxy Statementにおいて日本企業よりもはるかに詳細で投資家がエンゲージメントを行うのにあたって有用な情報が盛り込まれています。私の予想では米国ではややニュアンスの異なるサステナビリティ情報開示、どちらかと言えばいわゆるシングル・マテリアリティに基づく開示が今後も進むとみています。
こういった状況を踏まえると日本企業の開示も2026年さらに進むことを期待したいと思います。Sustainability Statement とFinancial Statementを一層充実させていただきたいと願う次第です。

