2025年 年頭所感
WICIジャパン 代表理事 北川哲雄
2025年1月
WICIジャパン 代表理事
北川 哲雄
皆様明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
企業情報開示に関して今年は4点ほど注目したいと思います。
第1点は統合報告書です。日本企業の統合報告書は諸外国のそれと比べ独特の発展の仕方をしてきたと思います。優れた報告書とは、一言で言えば優れた「戦略報告書」になっていると言えます。評価の高い報告書を時系列でみると毎年進歩しているという点が挙げられます。日本企業の学習能力の高さ、勤勉さを改めて感じます。今年の統合報告書を読むことは今から楽しみです。私見によれば統合報告書の評価は海外企業も含めて行う時代が来ていると言うことです。
第2点は投資家との双方向コミュニケーションが活発化していることです。ESG説明会を毎年定期的に開催されている企業も多くなってきました。昨年12月に6回目(毎年開催)を迎えたある企業の場合、ここまで開示する時代になったのか、と感無量でした。ある企業の場合統合報告書の説明会自体も行いました。動画配信の威力も見せつけられる時代でもあります。
第3点はCFOとCSOにおいて海外先進企業と遜色ない優秀な方々が散見されるようになってきたという点です。彼らの中には自社の株式保有者として望ましい投資家(Desired Investors)に照準を合わせ積極的にエンゲージメントしているケースもあります。彼らは歯ごたえのある投資家と真剣勝負しそこで得た傾聴に値する投資家の提言を経営に反映することが重要であると確信しています。
第4点は統合報告書と有価証券報告書の「一体化」の議論が開示の重複化との関係で起きてくるのではないかと予想します。我が国における統合報告書の欠点は発行時期の遅さです。有価証券報告書における記述情報とサステナビリティ情報開示の充実はこの論議に拍車をかけることでしょう。私自身は「一体化」による効率的なOne Report の作成はそれなりに意味のあることと思っています。有価証券報告書における大いなる誤解の一つは「将来情報の記述をしてはいけない」と多くの人が思い込んでいることです。そんなことはありません。リクルート社の有価証券報告書を参照してみてください。統合報告のエッセンスが記述情報の中に織り込まれています。いずれにしてもこの議論は効率的開示・開示体系の在り方を考えるきっかけになるだろうと確信しています。