2025年 年頭所感
WICIジャパン 常務理事 住田孝之
2025年1月
WICIジャパン 常務理事
住田 孝之
明けましておめでとうございます。毎日のように、世界中で、驚くようなことが起き、なぜそんなことになったのだろう?と考えている間もなく、次のニュースが飛び込んでくる、そんな日々になってしまいました。グリーン関連ビジネスやサステナビリティに関連する分野でも、様々な変化が起きています。
欧州では昨年の選挙などを通じて様々な国で右派が台頭。再エネやEVの推進が結果的に中国企業の競争優位の前に多くの欧州企業を苦境に陥れるという結果につながっていることもあり、グリーン化へのスピードや道筋、仕組みが見直されようとしています。
昨年再選されたフォンデアライエン欧州委員長の下、炭素国境調整措置(CBAM)の見直しは、簡素化の方向で、予定を早めて行われるようです。また、関連する開示を義務付けているESRSも、産業界の声を反映して、簡素化の方向での見直しが行われることになりました。昨年懸念していたことが、欧州の産業界を通じて、欧州委員会にも伝わりつつあるということでしょう。
一方で、投資家目線を中心に標準化を進めているIFRS財団は、昨年はイタリアでWICIイタリアと共催で統合報告と統合思考についてのカンファレンスを行いました。この4月には、同様のカンファレンスが東京で開催されますので、1000を超える統合報告の実績がある日本の産業界からインプットを行う好機となります。
また、IFRS財団の下での統合報告コミュニティの活動も次第に活発化しつつあります。年に3回程度、私を含む各国のリーダーによる会議が行われており、昨年12月には日本を特集した会議が開催され、私を含む日本からの参加者が日本の取り組みを説明しました。また、2023年9月に発足した統合報告コミュニティジャパンは、WICIジャパンの特別委員会としての位置づけとなりましたが、政府を含めて統合報告に関心を有する組織の代表者などが集まって、これまでに4回、活発な議論を行っています。
さらに、WICIグローバルでは、主に欧州のメンバーがリードする形で、新たなイニシアティブとしてSII(Strategic Intangibles Initiative)を11月に立ち上げました。IASBやISSB、さらには欧州のEFRAGが関心を有するインタンジブルズについての考え方の整理を、関係する組織が集まって共通のものにしようというものです。20年前に始まった日本の知的資産経営以来の取り組みを世界が改めて認知するチャンスとも言えます。
世界が変わりつつあることは間違いありません。昨年まで行った、日本の価値分科会でも整理したような日本らしい価値創造の考え方が世界に認められ、広がっていけば、きっと世界が今よりもずっと暮らしやすいものになるように思います。チャンスはますます広がっています。WICIの活動はそれを目指しているものだと私は思っています。今年もみなさまの積極的なご参加に期待しております。