2019年11月24日(日)
WICIシンポジウム2019

WICIシンポジウム2019WICIシンポジウム2019

WICIシンポジウム2019のご案内

今年のメインテーマは「ガバナンス」です

「ガバナンス」の語源は、ギリシャ語の“Kubernan”で「舵を取る」を意味します。つまり、企業が自ら舵をとって、自社の方向性を見極めていくことに他なりません。しかし、現実には「舵を取るより取られてしまっている企業」も少なくはありません。

東京商工リサーチの調査によると、不適切会計の開示企業は、調査を開始した2008年の25社から2016年は過去最多の57社と9年間で2.2倍に増え、2018年は過去2番目となっています。不祥事は減るどころか増えているのが現状です。不適切会計の事例だけをもってガバナンスの良否を断じることはできませんが、不適切会計を当局に提出し、開示することを取締役会が許したという事実はガバナンスが機能していないことを端的に示しています。

そもそも、日本企業と欧米企業のガバナンスの根本的な相違点は、「内部相互監視によるガバナンス」と「客観的視点によるガバナンス」を推進してきた点にあります。近江商人の経営に範をとる明確な事業家訓を経営規範とするガバナンスは、「内部相互監視型ガバナンス」に属します。このガバナンスの鍵は時代の流れに事業の家訓を活かす経営者の才覚とモラルの高さに大きく依存するものです。日本的相互信頼と人間的尊厳依存でも十分に機能してきた歴史があることも事実です。

しかし、アメリカ経営学に大きく依存するグローバリゼーションの流れを受けて、日本企業の国際的な評価を高めることや、海外からの投資を促進する目的のために「客観的視点によるガバナンス」が強く要請されました。一方で、経営者個人のモラルの高さに依存する「内部相互監型ガバナンス」が機能しない事例が明らかにされるにつれ、「客観的視点型ガバナンス」の導入が喫緊の課題と言われてきています。欧米の先進事例に参照しつつ日本企業の特性に配慮を加えた客観的視点型の「ガバナンスコード」が2015年に導入されて5年が経過しました。それでも、「舵をとられてしまっている企業が日本には多い」と言われるのは何故でしょうか?

2007年の設立以来、企業の価値創造の源泉でありながら伝統的事業報告では扱いきれない身目に見えない「知的資産」や「無形資産」に光を当て、企業が担う価値創造プロセスを「見える化」する企業の情報開示のあり方を提案してきたWICIにとって、この問題は見過ごせません。

さらに、このWICIの動きは2013年12月にIIRC(International Integrated Reporting Council:国際統合報告評議会)の「国際統合報告フレームワーク」の公表に結実しています。この統合報告の本来の狙いは、企業経営を「統合思考」の下で行うことで、ガバナンスを強化し、価値創造プロセスにおけるイノベーションの促進を通して社会的価値の強化へとつなげる経営プロセスの進化を求めるものに他ならず、統合報告書作成企業が400社を超え、国別では世界一の発行企業数となっている日本が「統合報告を口にするが、ほど遠い経営の実態」との誹りを受けないためにも改めて正面から取り上げていかなければならない大きな課題に他なりません。

また、2015年9月に国連サミットにおいて、「誰一人取り残さない」多様性と包摂性のある持続可能な社会の実現のため,2030年を年限とする17の 国際目標とその具体的内容を挙げた169のターゲットおよびその232の指標が採択されたSDGsが国連加盟国の構成員に求められることが加えられました。この社会価値について明確なゴールが設定されるに伴い、WICIが推奨する統合報告に関し、投資家優先のステークホルダー観の見直しが求められることになります。

換言すれば、IR部門のみが投資家を中心に行うコミュニケーション・ツールにとどまっている統合報告書の現状を乗り越え、ESGやSDGsへの対応を一歩進めて統合報告の次のステージを目指すときにほかなりません。

FRC「英財務報告評議会(Financial Reporting Council)」から2016年に発行された『企業文化と取締役の役割』においても、「強固なガバナンスは健全な文化に支えられている」と同時に、「健全な文化において強固なガバナンスは必要不可欠である」とも記載されています。ガバナンスは、本来は企業に属する「人」が自ら作り上げるものであり、ガバナンスと企業文化は表裏一体を成すものに他なりません。

日本企業が直面している喫緊の課題と統合報告の関係を深く議論することを目指し、今年のWICI シンポジウムのテーマを「ガバナンスと価値創造のあり方〜これからの統合報告〜」と題して開催することにいたしました。「ガバナンスとは何か」「自社の企業文化の再確認」「統合報告を利用した企業経営の進化」などの取組みを改めて考える機会として、来る11月24日(日)に早稲田大学 小野記念講堂にお運びください。

お誘いあわせのうえ、ふるってご参加いただければ幸いです。

2019年8月吉日

昆 政彦
WICI Japan Chairperson

開催概要

WICI Symposium 2019
見えない資産の時代における
ガバナンスと価値創造のあり方
〜これからの統合報告〜
主催World Intellectual Capital Initiative(WICI)
後援 経済産業省
国際統合報告評議会 (International Integrated Reporting Council‐IIRC)
一般社団法人CFO協会
協賛

株式会社バリュークリエイト
PwCあらた有限責任監査法人
太陽有限責任監査法人
株式会社ICMG
有限責任あずさ監査法人
有限責任監査法人トーマツ
株式会社エッジ・インターナショナル
一般社団法人CFO協会
株式会社日本ベル投資研究所
株式会社ファルコン・コンサルティング
ジェイフェニックスリサーチ株式会社
株式会社ウィルズ
株式会社富士通ラーニングメディア
トッパンエディトリアルコミュニケーションズ株式会社
Integration Summit
宝印刷株式会社
開催日2019年11月24日(日)
会場早稲田大学 小野記念講堂
東京都新宿区西早稲田1-6-1 27号館 地下2階